2023.04.15
資産活用通信2023年4月号「相続による不動産の登記を忘れずに!」
対策が必須となっている「所有者不明土地」とは?
「所有者不明土地」とは、以下のような状態にある土地のことです。
① 不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地
② 所有者が判明しても、その所在が不明で連絡がつかない土地
現在、相続の際は所有権を移転する手続き(相続登記)が義務ではありません。そのため、代々受け継いでいる土地が既に亡くなった先祖の名義のままになっており、相続権を持つ人たちによる遺産共有状態になっている、ということは珍しくありません。
所有者全員を探し、同意を得るには、大変な時間と費用、労力が必要で、土地の利活用の面で問題になっています。
「所有者不明土地」発生を予防する「相続登記」の申請の義務化
そこで、所有者不明土地発生予防の観点から、令和6年4月1日には相続登記の申請が義務化されることとなりました。
制度の執行日又は相続により不動産を取得したことを具体的に認識した日のうち遅いほうから3年以内に、正当な理由なく相続登記をしなかった場合、10万円以下の過料が科せられます。
執行日前に発生した相続についても義務化の対象となるため、注意が必要です。
「相続人申告登記」の創設で相続時の手続きが簡単に
相続登記の義務化に合わせて、「相続人申告登記」が創設されます
この制度では、相続が開始したことと、その相続人であることを登記官に申し出ることで、申出を行った本人は申請義務を履行したことになります。
相続人が複数いる場合でも、他の相続人の代理申出を含め、単独で申出を行うことができます。必要書類も申出をする本人が相続人であるとわかる書類(戸籍謄本等)のみで、申出の際の資料収集の負担が軽減されます。
既に長期間にわたって遺産分割が完了していない場合
令和5年4月1日より、相続開始から10年経過後に行う遺産分割については原則として法廷相続分又は指定相続分によって画一的に行うこととされました。
この措置は施行日前に開始した相続にも適用されますが、5年の猶予期間が設けられています(図表)。
相続した土地を手放す「相続土地国庫帰属制度」が開始
土地所有に対する負担感の高まりを背景に、「相続土地国庫帰属制度」が令和5年4月27日から開始されました。
この制度では、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により取得した土地を手放して、国庫に帰属させることができます。ただし、次の2つの条件があります。
(1) 土地の要件
通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地は不可
(2) 負担金等の支払い
10年分の土地管理費相当額の納付が必要
出典:TKC事務所通信