はじめに

小規模宅地等の特例は基本的に被相続人が相続開始直前に居住していた家屋の敷地について適用される特例ですが、近年、要介護状態になり自宅での生活が困難になったため老人ホーム等に入居し、その後亡くなる方が増えてきました。
平成25年度税制改正により、平成26年1月1日以後に発生した相続においては、被相続人が要介護状態等になり自宅での生活が困難になったため老人ホーム等に入居し、その後亡くなった場合にも適用されるようになりました。

小規模宅地等の特例とは

以前のブログでもご紹介しましたが、相続した土地のうち、被相続人等が住んでいた家屋の敷地のうち一定のものについては、その相続税評価額が大幅に減額される「小規模宅地等の特例」という制度があります。

「相続した土地の評価額が大幅に減額される！～小規模宅地等の特例～」
https://sozoku-yokohama.com/blog/https-sozoku-yokohama-com-blog-sozoku_zoyo_m6/

小規模宅地等の特例の対象となる宅地は数種類ありますが、そのうち被相続人の居住の用に供されていた宅地等を「特定居住用宅地等」といいます。
平成25年度税制改正により、被相続人が相続開始直前まで居住の用に供していた宅地等だけではなく、被相続人が老人ホーム等に入居する直前まで居住していた宅地等のうち、下記の3つの要件を満たすものについては「特定居住用宅地等」として小規模宅地等の特例の適用を受けることができるようになりました。
特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受ける宅地等については、相続税評価額が最大330㎡まで80％が減額されます。

要件１：被相続人が相続開始の直前に要介護認定等を受けていたこと

1つ目の要件は、被相続人が相続の開始の直前において要介護認定等を受けていたことです。
老人ホーム等に入居等をする時点において要介護認定等を受けていない場合であっても、その被相続人が相続の開始の直前において要介護認定等を受けていれば、老人ホーム等に入居等をする直前まで被相続人の居住の用に供されていた建物の敷地は、相続の開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当することになります。
なお、「要介護認定等」とは下記のものをいいます。

① 要介護認定（介護保険法第19条第1項）
② 要支援認定（介護保険法第19条第2項）
③ 基本チェックリスト※（介護保険法施行規則第140条の62の4第2号）
④ 障害支援区分の認定（障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第21条第1項）

※ ③は平成27年4月1日以後に発生した相続について適用

要件２：被相続人が老人福祉法等に規定する老人ホーム等に入居していたこと

2つ目の要件は、被相続人が老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等に入居又は入所していたことです。
なお、「老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等」とは下記のものでと都道府県に登録されている施設をいいます。

① 認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居（認知症高齢者グループホーム）（老人福祉法第5条の2第6項）
② 養護老人ホーム（老人福祉法第20条の4）
③ 特別養護老人ホーム（老人福祉法第20条の5）
④ 軽費老人ホーム（老人福祉法第20条の6）
⑤ 有料老人ホーム（老人福祉法第29条第1項）
⑥ 介護老人保健施設（介護保険法第8条第28項）
⑦ 介護医療院（介護保険法第8条第29項）
⑧ サービス付き高齢者向け住宅（上記の有料老人ホームを除く、高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条第1項）
⑨ 障害者支援施設・共同生活援助を行う住居（障害者総合支援法第5条第11項15項）

要件３：自宅が生計一親族以外の者の居住の用に供されていないこと

3つ目の要件は、被相続人が老人ホーム等に入居した後に空き家となった自宅を事業や貸付の用に供していないこと、また生計一親族以外の人の居住の用に供していないことです｡
ただし、老人ホーム入居前から引き続き居住している親族（生計一親族）がいても適用可能です。

終わりに

被相続人が老人ホーム等に入居していた場合でも、一定の要件を満たせば自宅について小規模宅地等の特例の適用が受けられる場合があります。
しかしその判断は複雑である上に、相続税額に与える影響が大きいため、まずは税理士などの専門家に相談されることをおすすめします。

ベイヒルズ税理士法人では、上記の相談にも対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。