2023.07.19
相続税の「配偶者控除」の注意点!!!
はじめに
「二次相続」とは「一次相続」の相続人であった配偶者の相続を指します。配偶者がご存命の相続にて納税をゼロあるいは少なくするには、その配偶者が財産を多く承継することになりますが、「二次相続」ではそれが良からぬ結果をもたらすことがあります。
以下、実際にあった事例をもとにご説明します。
一次相続の納税がゼロで良いとは限らない。
父、母、子の3人家族で、父が先に亡くなり、その後母が亡くなったケースを想定します。
父には亡くなる直前1億円の財産が有るものとします。
父の相続(「一次相続」といいます。)にて、その配偶者である母がその相続財産を承継した場合、財産額1億6千万円までであれば相続税は発生しません。これは「配偶者に対する相続税額の軽減(お客様には「配偶者控除」とご説明しています。)」という規定によるものです。
父から母がその相続財産の全てを承継した場合、確かに一次相続の相続税はゼロですが、 次の事を想定していなかった場合、とんでもない落とし穴にはまってしまうかもしれません。
立て続けに母が亡くなってしまったため、二次相続が発生!!
不幸なことに続けて母が亡くなってしまいました。二次相続が発生します。
母には然り、父から受け継いだ財産1億円があります。
母の相続人である子は、母から受け継いだ財産1億円について相続税の計算をしなければなりません。
結果、相続税は12,200,000円発生してしまいます。
(母の固有財産はここでは考慮していません。)
もし一次相続で別の遺産分割をしていたのであれば・・・
次に一次相続について、母と子それぞれ財産半分を取得したケースを想定します。
財産額は1億円なので、それぞれ5,000万円を父から承継した場合です。
同様に続けて母が亡くなった場合ですが、相続税は下記の結果になります。
一次相続での子の相続税額・・・3,850,000円
二次相続での子の相続税額・・・1,600,000円
合計・・・5,450,000円
恐ろしいことに、財産の承継の順番によって相続税額は半分以上も異なってしまいます。
どちらの例も、最終的に子は財産1億円を親から承継します。
しかし、相続税の知識が有るか無いかで、納税は半分も異なる結果となります。
なんと、一次相続で税金を納税した方が、二次相続の税金も少なくなる結果となった。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか。
それはとても複雑な相続税の計算の構造によるものです。
その中でも以下の2つが大きく影響しています。
1.一次相続にて、子が基礎控除をうけているかどうか
「基礎控除額」・・・3,000万円+600万円×法定相続人の数
亡くなった方の財産総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税の申告も必要ありません。
また基礎控除額はその相続の都度適用されるものです。上記の例では下記のように計算 されています。
一次相続・・・4,200万円 ( = 3,000万円+600万円×2人)
→ 一次相続の法定相続人は母と子の2人
二次相続・・・3,600万円 ( = 3,000万円+600万円×1人)
→ 二次相続の法定相続人は子1人
実は、一次相続で「配偶者控除」を財産1億円全てに使ってしまうことは、 子が受けられるはずだった「基礎控除」を使っていないことと同じ意味となります。
下記の(1)、(2)は子が承継した財産について適用を受けた基礎控除額です。
(1) 一次相続で財産を承継せず、二次相続で母から財産1億円を承継した場合の 基礎控除額
一次相続・・・なし(財産全て母が取得するため)
二次相続・・・3,600万円
(2) 一次相続で父から財産5,000万円、二次相続で母から財産5,000万円を 取得した場合の基礎控除額
一次相続・・・2,100万円(=4,200万円の半分)
二次相続・・・3,600万円
合計・・・5,700万円
(2)では一次相続及び二次相続の両方で相続税の納税が発生します。
しかし、下記2.の相続税の計算をご覧頂ければ、基礎控除額はより多く受けられている事 がわかります。
2.承継の順序によって、相続税の税率が異なること
専門的な説明となりますが、相続税の税率は被相続人の財産額の規模とその法定相続人の数で決まります。
相続税の計算は多くの順序がある為、割愛しながらご説明いたしますが、上記の基礎控除額を踏まえると、子の相続税は以下の通りに計算されます、
(1) 一次相続で財産を承継せず、二次相続で母から財産1億円を承継した場合の相続税額
(1億円-3,600万円)×30%-700万円= 12,200,000円
(2) 一次相続で財産5,000万円、二次相続で財産5,000万円を承継した場合の相続税額
(1億円-5,700万円)×15%-(50万円+50万円)=5,450,000円
驚くことに適用される税率が半分も違います。
結論、一次相続、二次相続の両方で納税する方が、全体の相続税の負担は少ない。
基礎控除額、税率が影響してこのような結果となりました。
しかし、想定しているケースは非常に単純なケースです。
法定相続人は何人いるのか、はたまた亡くなった方がどのような財産をお持ちであったか など全体的、総合的に判断する必要があります。
また遺言で既に財産の承継先を決めてしまったなど、生前のご準備はすでにされている方も多いと思います。
しかし、相続人全員の合意があれば、相続税のことも踏まえもう一度分割について見直す事ができるかもしれません。
遺産分割と相続税は切っても切り離せない関係にあります。
専門的な判断は是非専門家にご相談ください。
ベイヒルズ税理士法人では、年間100件以上の相続税申告を受任頂いております。
今ご説明したような、一次相続と二次相続についてのご相談ほかお困りのことに
真摯にお力添えさせていただきます。
相続税の計算は非常に複雑かつ難解です。
込み入ったご相談も承ります。
お気兼ねなく、是非お声がけください。