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2021.12.15

資産活用通信2021年12月号「節税目的で、借入取得の賃貸マンションの相続評価は評基通6項適用で、納税者敗訴(高裁)!」

東京高等裁判所は、先般、相続税の節税目的で借入金で取得した賃貸マンションの相続税評価額を巡って争われた控訴審判決で、一審(東京地方裁判所)に続き、財産評価基本通達6項(以下「評基通6項」という)に基づく国税庁長官の指示による評価を認めて、控訴人(相続人)の控訴を棄却しました。

被相続人は、生前から相続税圧縮を検討

(1) 事実関係と申告内容

つぎのように、被相続人は生前(=実際は、相続直前)より銀行と本件不動産購入などによる相続税の圧縮効果などを検討していたところ、取得の3か月後に相続が発生し、相続人は本件マンションについて(債務控除後で)▲10億2,239万円として、他の相続財産と併せて相続税の申告を行っていた。

(2) 国側の主張

これに対し、国は評基通6項を適用し、マンション評価額は10億4,000万円(原価法と収益還元法による鑑定評価額)として相続税の更正処分等を行った。

参考までに、マンション評価額から債務を控除すると、差引▲4億6,000万円となる。

東京高裁は、一審判断を支持!

以上により、相続開始時の賃貸マンションの時価評価が許容されるかを争点となった。
つまり、評価通達に基づかない評価方法=賃貸マンションの時価の算定が許されるか否かがポイントとなった。

(1)  東京地裁の主な判断内容

一審では、つぎのように評価通達の定める評価方法では適正な時価を適切に算定できないなど、租税負担の実質的な公正を著しく害することが明らかである特別の事情があるとして、賃貸マンションの時価は評基通6項に基づく鑑定評価額10億4,000万円として、更正処分等が適法と判断していた。
・通達評価額と鑑定評価額とに著しいかい離が生じていること
・相続税の負担減少を認識・期待して賃貸マンションが購入されたこと

(2) 東京高裁の判断

一審の判断を支持し、賃貸マンションの時価は評基通6項に基づく鑑定評価額10億4,000万円と認定し、相続人の控訴を棄却した。
東京高裁の判断の中で、①被相続人らが、銀行担当者と相続税の負担軽減方法を相談して、その方策として購入した経緯、②賃貸マンションの通達評価額は、鑑定評価の1/2にも満たず、金額面でも5億円以上も少なく、そのかい離度は著しい、とも指摘している。
また、東京地裁はこれに加えて、通達評価による相続税額1,472万円と鑑定評価額での相続税額1億335万円についても、評価額のかい離で大幅な差異が生じているとも指摘している。

留意すべき点

本件は、敗訴した相続人が最高裁に上告と上告受理の申立てが行われており、最終確定にはなっていないものの、こうしたケースにおいては「評基通6項」が適用されるものと解すべきでしょう。
仮に、被相続人の頭がはっきりしていて、相続人が賃貸マンション取得に関わっていなかったとしても、相続直前に銀行に相続対策としての借入金での本物件購入を相談しており、節税狙いはほぼ明白で、銀行サイドではこうしたやり取りを取得資金貸付の稟議書などに遺すのが通例であり、短期の相続対策での資金借入れを証拠立てる結果となっています。
なお、本件では申告後に賃貸マンションが第三者などに売却されているのか、その譲渡価額などについては触れられておらず何とも申し上げられないものの、15億円もの借入れにより取得した)賃貸マンションがその家賃収入だけで返済可能かといえば、大幅な持ち出しとなることが想定されます。当然こうした不動産は売却時に取得価額(15億円)での売却は期待できず、その意味でも超短期間での売却が必要となるワケです。つまり、相続人の主張はともかくとしても、通達評価は客観的合理性からも不適切であることは言えそうです。

出典 : SDG相続ドック・グループ「ニュース2021.06.10」

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