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2022.06.15

資産活用通信2022年6月号「社会保険の適用拡大と年金制度の見直し」

パートタイマーへの社会保険の適用拡大

(1) 10月から従業員100人超が対象

パートタイマーやアルバイト(以下、パートタイマー等)は、原則として年収が130万円未満であれば、社会保険への加入義務はありません。ただし、従業員が500人超の企業では、月額賃金が8万8千円以上(いわゆる106万円の壁)など、下記の一定の条件をすべて満たしたパートタイマー等は社会保険への加入が義務づけられています。

① 月額賃金が8万8千円以上(年収105.6万円)
② 週の所定労働時間が20時間以上
③ 雇用期間が2か月以上の見込み
④ 学生ではない

加入義務の対象となる企業規模が以下のように引き下げられます。
◉ 令和4年10月から : 従業員数 100人超
◉ 令和6年10月から : 従業員数   50人超
※従業員数は、現在の厚生年金保険の適用対象者数です。

(2) 個々の働き方にも影響が

対象が従業員数100人超であれば、改正の影響を受ける企業は限られてきますが、やがて50人超となっていき、将来的にはさらなる範囲の拡大も予想されます。
新たに適用対象となるパートタイマー等において、現在、年収を130万円未満に調整して働いている場合、次のように各人の働き方も変わってくることが推測されます。

① 労働時間を減らして社会保険の扶養の範囲内(106万円の壁)におさえる
企業とパートタイマー等には社会保険料負担は発生しませんが、パートタイマー等の収入が減ることになります。
パートタイマー等の労働時間が減少するため、企業は新たな労働力確保とシフトの見直しが必要になります。

② 社会保険に加入ならば、労働時間を増やして手取収入を増やす
企業は、働く人の労働時間が増えることで、シフトの見直しが必要になるとともに社会保険料の負担が増加します。
パートタイマー等は、手取収入を増やす新たな働き方を考えることになるでしょう。

年金受給についての改正

(1) 老齢厚生年金の支給停止基準の緩和

老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)は、原則として65歳からの受給です。65歳未満で在職(厚生年金の被保険者であること)しながら老齢厚生年金を受け取っている場合、これまでは報酬(月額賃金と賞与の月額換算額)と年金の合計が1か月当たり28万円を超えると年金の全部または一部が支給停止とされていました。制度改正後の4月からは、支給停止の基準が47万円超(報酬と年金の合計)に緩和されました。

(2) 在職厚生年金の定時改定の導入

これまで、65歳以降も厚生年金に加入して70歳まで働き続けても、年金額は70歳になるまで改定されませんでした。4月から在職定時改定が導入され、65歳以降も働く人の年金額への反映が、毎年(年1回、10月分から)行われることになります。

(3) 75歳までの繰り下げ受給が可能に

公的年金は、65歳の受給開始を基本に、60歳までの繰り上げ、あるいは繰り下げて受給することが可能です。繰り下げは、これまで70歳まででしたが、4月からは75歳まで可能となっています。

◉ 年金受給を65歳より繰り上げた場合:繰り上げ1か月につき年金額が0.4%減額
◉ 受給開始65歳から繰り下げた場合:繰り下げ1か月につき年金額が0.7%増額

仮に75歳まで繰り下げると、年金額は84%増額されることになります。65歳以降も働けるのであれば、受給を繰り下げて将来の年金額を増やすという働き方も考えられます。

(4) 高齢者の雇用を考える契機に

年金制度の改正は、65歳定年制や70歳定年制(努力義務)も大きく関係しています。これまでは65歳まで頑張って働いても、受け取る年金が減るなど、働く意欲を損なうような制度設計でした。これからは60歳以降も働いた人が働いた分を加味する制度へと変わり、定年制も引き上げられました。企業としても高齢の従業員により働いてもらう制度が必要となっています。

出典:TKC事務所通信

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