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2023.05.22

負担付贈与にご注意!

はじめに

2023年度の税制改正により、注目されていた生前贈与のルールが変わることになりました。生前贈与は、相続対策、節税対策として広く活用されておりますが、贈与の一種でもある「負担付贈与」についてお聞きになったことはありますでしょうか。
今回は、負担付贈与について、その制度の概要、通常の贈与との相違点などをお伝えしたいと思います。

 

負担付贈与とは

負担付贈与とは、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいいます。通常の贈与とは異なり、贈与を受ける人が一定の負担を負うことが特徴であり、例えば、親が住宅ローンを組んでアパートや自宅を建築、あるいは購入したものを、マイナスの財産である借金(ローン)とプラスの財産である不動産の両方を子に贈与するなどがこれにあたります。このように、不動産を贈与する代わりに住宅ローンを払う契約をするといった使われ方が一般的です。
そのほかにも
・親が財産を贈与する見返りに、介護を負担してもらう。
・土地を贈与する見返りに、その土地の一部の無償貸与を負担してもらう。
といったケースもあります。

 

負担付贈与時の課税関係

それでは、上述の通り実際に不動産の負担付贈与を行った際に贈与を受けた側、渡した側でどのような税金がかかるかについて、具体例を使って計算して行きたいと思います。

【例】
父から子に自宅を贈与する代わりに、子(18歳以上)にローン残債を負担してもらう。
•自宅(土地・建物):5,000万円(時価)※購入時3,000万円
•ローン残債:4,000万円

①贈与を受けた側

個人から負担付贈与を受けた場合は、贈与財産の価額から負担額を控除した価額に贈与税が課税されることになります。この場合の課税価格は、贈与された財産が土地や借地権などである場合および家屋や構築物などである場合には、その贈与の時における通常の取引価額(時価)に相当する金額から負担額を控除した価額によることになっています。
負担付贈与の贈与税は、以下のような計算で求めていきます。

【 {(贈与額-債務)-贈与税の基礎控除額 } × 贈与税率 - 税率ごとの控除額 】

贈与税の税率は贈与財産の評価額に応じて異なります。また税率には「特例税率」と「一般税率」の2種類があり、今回の親から子(18歳以上)への贈与においては、「特例税率」を適用します。
計算式に当てはめると、

【 {(5,000万円-4,000万円)-110万円 } ×30%-90万円 】

となり、贈与税は177万円となります。

不動産を贈与する場合、通常の贈与の場合は、「相続税評価額」によって贈与税を計算しますが、負担付贈与の場合は「時価」によって計算することとなり、通常の贈与と負担付贈与とでは評価額が異なることとなりますので、注意が必要です。

②贈与をした側

次に、贈与をした側の税金についてみていきたいと思います。
負担付贈与の契約では、贈与者にも譲渡所得税や住民税がかかる場合があります。それは、贈与者の負債額が贈与財産の評価額よりも多くなる場合であり、受贈者に債務を負担してもらうことは贈与者にその分の利益があると考えられるからです。
上記の例で、親が当初3,000万円の自宅を住宅ローンで購入し、ローンの利息によって債務合計が4,000万円になったとします。その自宅を子へ贈与する代わりに、その債務のすべてを子が承継した場合、親は借金が無くなるため、その借金4,000万円で不動産を子に売ったという扱いになります。また、購入時当初は3,000万円だった不動産を4,000万円で売却したことにより、親には1,000万円の譲渡所得が生じます。
計算式に当てはめると、
{(4,000万円-3,000万円)} ×20.315 % ※所有期間が5年を超えるとして計算
となり、譲渡所得税と住民税を合わせて税額は203万円となります。

 

負担付贈与にならないように注意

アパートオーナーは、一般的に借主から入居時に敷金・保証金を預かります。敷金・保証金は、将来入居者に返還しなければいけない債務であり、アパートの贈与では、新所有者に預かった敷金返還義務も引き継ぐ必要があります。よって、建物と一緒に敷金等を引き継ぐと負担付贈与にあたることになります。
負担付贈与となれば、建物の贈与価額は時価評価となり、贈与税額の負担も大きくなってしまいます。
これを防ぐ対策としては、建物と一緒に、敷金相当の金銭を抱き合わせて贈与することです。敷金返還債務を承継させる意図が、贈与者・受贈者間においてなく、実質的な負担はないと認定することができるためです。
この場合は、通常の贈与として取り扱われ、建物の評価額は相続税評価額となるため、負担付贈与よりも評価額は低くなります。

 

終わりに

負担付贈与を行うと、贈与者、受贈者それぞれに思ってもいなかった税金がかかる場合があるため、慎重な検討が必要です。
ベイヒルズ税理士法人では、上記の相談にも対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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