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2023.09.15

資産活用通信2023年9月号「生前退職金と死亡退職金の違い」

 

退職金を生前に受け取る場合は所得税法上有利なケースが多い

経営者が生前に退任し、株主総会決議を経て会社から役員退職金規定により退職一時金を受け取った場合、その支払われた退職金のうち妥当と認められる金額は損金に算入することができます。よって、支給した期に大きな特別損失が生じることとなり、翌期には株式の評価額が大きく下がります。したがって翌期に贈与すれば、後継者は評価額が大きく下がった株式を取得することができます。
一方、退職金を受け取った経営者にとっては、その所得(退職所得)は所得税の対象になりますが、下の「退職所得の計算方法」のように一定の退職所得控除がある上、他の所得と分離して課税されますので、税金負担の軽い有利な受取方法となります。
多額の退職金を受け取る場合には、役員報酬として報酬を受け取る場合の所得税率に比べて税率が有利に計算されるため、生前に役員退職金を受け取ることは所得税法上有利なケースが多いです。

◆ 退職所得の計算方法

所得金額 = (収入金額 - 退職所得控除額) × 1/2※1

退職所得控除額
・勤続年数20年以下 ・・・ 40万円 × 勤続年数※2
・勤続年数20年超・・・ 800万円 + 70万円 × (勤続年数※2 - 20年)

※1.ただし、役員としての勤続年数が5年以下の役員退職金等は1/2課税とならない。また、一般社員等としての勤続年数が5年以下の退職金等の300万円を超えた部分は1/2課税とならない。
※2.年数の1年未満の端数は1年とする。

法人税法上、損金に算入できる退職金を支給すること

気をつけないといけないのは、法人税法上、損金算入となる退職金部分と損金不算入となる退職金部分とがあることです。法人税法上は支払った退職金は原則として、損金算入されますが、役員に対して支給した退職給与の額のうち、不相当に高額な部分の金額は損金算入することはできません。よって、妥当とみなされる役員退職金を支給することが、法人税法上も取引相場のない株式の評価においても重要なポイントとなります。

死亡退職金は相続税の対象だが非課税枠がある

経営者の死亡に伴い死亡退職金を支払った場合は、自社株式の純資産価額は下がりますが、類似業種比準価額は前期末を基準として計算しますので相続税評価額は下がりません。
また、会社が支給した死亡退職金は「みなし相続財産」となり、相続税の課税対象となりますが、この死亡退職金や弔慰金に関しては、非課税枠が設けられています。

役員退職金を2回活用する方法

さて、経営者が生前に退職し、退職一時金を受け取ってしまうと、死亡退職金の支給を受けることはできなくなります。生前に退職する場合にも死亡退職金の非課税枠を活用するには、どうすればよいのでしょうか。
そのような場合は、代表権のある会長や社長等の役員を退き、そこでいったん役員退職金の支給を受け、その後は後継者のアフターケアのために非常勤として顧問や相談役等に就任します。ただし、給与は最低でも従前の2分の1未満とし、経営に関与せず週に2~3日のみ出勤し、後継者の育成や情報収集・業界活動・慶弔行事を担当します。
このように、完全に会社の経営にタッチしない立場として、非常勤の形態で勤務し、相続時まで頑張ってもらえれば、もう一度退職後の勤務期間に応じた死亡退職金の支給を受け取り、相続税の非課税枠を活用することができます。
ただし、形式的な退職であり実質的に経営に関与していると認められた場合には、退職金の損金算入が否認されます。その結果、所得税、法人税、贈与税が追加課税されるリスクがあるためご留意ください。

出典:TKC事業承継ニュース

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